かさはさすもの
2023年6月4日
本日はご来場ありがとうございます。
わたしは高校生の時、電車通学でした。近鉄伊賀線(現・伊賀鉄道)に乗って、伊賀神戸で乗り換えて名張まで。当然、自意識過剰な高校生でしたから、誰かに見られていることを、ものすごく意識しながら、カッコをつけて、粗暴な他校の生徒(そういう時代でした)の目をかわし、眠ったふりをするか、ほんとに眠るか、そんな電車通学。ここではないどこかに行きたくて、自分ではない何者かになりたくて、でも、どうしようもなくて。目を閉じて電車に揺られる高校生の自分は、まるで自分じゃないみたいで、不思議な感じがしていました。
そしていま。ふとした帰り道に近鉄電車の踏切で、電車に乗っているわたしを想像します。いつの間にか大人になって、自動車での移動が基本なので、いまのわたしは、ほとんど電車を見るばかりです。通り過ぎる近鉄特急の車窓の人々は、どこかへ行きどこかへ帰る。当たり前のことなのに、ちょっと羨ましい気持ちになります。
会いたい人がいる街があり、済ませないといけない用事があって、降りるべき駅がある。電車に乗るのはそういうことだと普通に思う。けれど、もしかしたら、気分がコロリと変わって、行ったことのないどこかに行けるかもしれない。
いまわたしが電車に乗ったとしたら…
そうやって電車を見ていると、高校生の時と同じような気持ちが残っていることに気づきます。相変わらず、何者にもなれない自分なのに、ここではないどこかへ行きたくなってきました。
(当日パンフレットより)
公演日
2023年6月4日
会場
caféしずく
脚本
橋本純司
演出
橋本純司
出演
角谷明子
ジョージ
加藤美咲
ジョージ
加藤美咲